旅先で本を買う in パラグアイ

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先日『ラテンアメリカ書店事情』という記事を掲載しましたが、本好き、書店好きの僕にとって、海外を訪れた時の数少ない買い物の楽しみが、現地で売っている本を買うことです。あまり物欲がないせいか、海外に行っても買い物らしい買い物をしないのですが、本屋だけは見つけるとつい吸い寄せられるように入ってしまいます(あとはサントスFCのオフィシャルショップ)。ブラジルの書店は2年前に訪れて何冊か本を買っていたので、今回はパラグアイの書店に本を買いに行きました。首都アスンシオン市内の「Mariscal(マリスカル)」という名前のショッピングモール内に入っている、「Lector(レクトル)」という名前の本屋さんです。ちなみに「Lector」はスペイン語で「読者」とか「読書家」って意味です。そういえば日本にも東京の池袋に本店を構える「LIBRO(リブロ)」という名前の書店チェーンがありますが、これは「本」を意味するスペイン語です。今ついでに店舗検索したら、リブロは中四国地方と北海道には一店舗も進出していません。ですので鳥取人の皆さんは見たことないと思いますが、我らが鳥取にも歴史ある今井書店や個性溢れる定有堂書店等、出版業界では名の知れたイケてる本屋がしっかり存在しています。安心してください。いやむしろ胸を張ってください。そして書店で本を買ってください。是非。

さて、話題がパラグアイから鳥取の方に遠く大きく逸れましたが、このレクトルという本屋さんには、思わず買いたくなるような本が何冊もありました。まずこれ。昨年世界中で惜しまれながらこの世を去ったコロンビア出身の大作家、ガブリエル・ガルシア・マルケスの作品群。左から順に『コレラの時代の愛』『百年の孤独』『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』の3冊。

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このうち最初の2冊は学生の頃に圧倒されながら翻訳版を読んだ思い出の作品達で、『百年の孤独』はスペイン語版も持っていました。僕が持っているスペイン語版がこちらです。

物語の内容を反映した表紙デザインで、気に入っています。そう、気に入っているのですが、上の写真の強烈な色彩のデザインの版を目にした途端、「こっちも欲しい!」となってしまいました。一番右の一冊の虹色と鳥のデザインもとっても素敵です。この感覚はもう完全に、読書の対象としての本というよりは、アート作品としての本というモノ(製品)そのものに対するマニアです。紙触りだとか匂いだとかフォントだとか字と字の幅だとか、それら諸々の細かい要素が合わさった上での「本」というプロダクトに対するフェティシズムがどうも僕にはあるようなのです。これらの本は書物としての役割に留まらず、インテリアの役割も果たしてくれます。普段暮らしている日本では見ることのないデザインの本たちは、視覚的な美しさだけでなく、空間そのものに「非日常性」という彩りを加えてくれるのです。

そして次に、ガルシア・マルケス作品より更に興奮してしまったのが、ちょうど裏側にあったこちらの棚。

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大好きな作家カルロス・ルイス・サフォンのシリーズが、完璧なデザインで並んでいる!!!サフォンについては(あとガルシア・マルケスも)前回ご紹介したパウロ・コエーリョと同様また改めて紹介したいですが、彼はスペイン王国カタルーニャ自治州バルセロナ出身の作家です。彼の出世作である『風の影』は、スペイン国内における単一の書籍の出版部数記録を塗り替え、世界各国で翻訳されています。日本語版は集英社文庫から出ており、『風の影』を含む3冊が発売されています。この3冊は「忘れられた本の墓場シリーズ」と呼ばれる四部作のもので、サフォンは現在最後の1冊を執筆中です。上の写真の青、黄、赤の本が順に『風の影』『天使のゲーム』『天国の囚人』という作品です。僕はこのうち『風の影』と『天使のゲーム』をスペイン語の別バージョンで既に所有していて、『天国の囚人』はブラジルポルトガル語版を持っています。順に以下の3冊です。

La-sombra-del-viento El_Juego_del_Angel o-prisioneiro-do-ceu-calor-ruiz-zafon

本当に美しいデザインです。しかしマニアというのは厄介なもので、今回レクトルで見つけたこの青、黄、赤のバージョンも同じく全部揃えて本棚に並べたくなってしまうのです。

そしてもう一冊、青、黄、赤の3冊の更に右隣にあるハードカバーの分厚い一冊。この一冊も「欲しい!」と即座に手を伸ばしてしまった1冊です。サフォンは『風の影』の成功で一躍世界的作家になる以前、青少年向けのミステリー小説の3部作を出版していたのですが、この3作は元々別個に出版されました。今回見つけたものはそれら3作を1冊にまとめた、いわゆるデラックス版です。ものの見事に出版社の販売戦略に引っかかっているわけですが、望むところです。彼らは本を愛する人間の想いをよく分かってくれています。

とはいえ全部買っていてはお金が足りなくなるし、そもそも買い物を目的とした旅でもないので、ここまで書いておいてアレですが、結局ガルシア・マルケスでもサフォンでもなく、パウロ・コエーリョの『アルケミスト』のスペイン語版と、同じくパウロ・コエーリョの愛の名文集の2冊を買って引き取りました。この記事の一番上の写真の2冊です。スクロールするの面倒だと思いますのでもう1回同じ写真載せます。

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この2冊もまた美しいデザインです。ちなみに左の名文集に至ってはイラスト付きのフルカラーです。なのにどういうわけか、値段は白黒で文字だけの『アルケミスト』の方が少し高かったです。謎でした。ともあれ、遠い地球の反対側で僕を待ってくれていたこの2冊を大事に読もうと思います。しかし本たちの方もまさかそんな遠くから来た奴の手に渡ることになるとは思っていなかったでしょうね。

というわけで今回は2冊だけを買って帰りましたが(あと妻が『星の王子さま』のスペイン語版をこっそり買ってプレゼントしてくれたので、正確には3冊持って帰りました。わーい)、魅力的な本は今回写真で紹介したものも含めて、まだまだ沢山ありました。必ずまた戻ってきて、少しずつ蔵書を増やすことを誓って店を出たのでした。そしていつか鳥取に、スペイン語・ポルトガル語の本がたくさん並んだ図書館を作るのです。その日まで待ってておくれ、美しい本たちよ。

以上、パラグアイの書店レクトルで本を買ったお話でした。


【今回ご紹介した本の日本語版】

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