運命調整局は存在するのか

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人生という舞台で生活していると、「うっかり忘れ物をして家まで取りに帰る」とか、「思わぬ所で知人と会って話し込む」とか、「長いこと連絡を取っていなかった友人から急に着信が入る」とか、「急な予定のキャンセルが続けて発生する」といったことが、誰の身にもしばしば起こることと思います。これら日常の些細な出来事のひとつひとつは大抵「偶然」として片付けられる種類のものです。でも、本当に「偶然」でしょうか。もしかしたら、あらゆる出来事は何らかの意味を伴った「必然」で、全ての人間にはその人自身に用意された「運命」が存在しており、日常的に発生する様々な「偶然的出来事」の一切は、それらの「必然」や「運命」がもたらしたものかもしれません。さらに言えば、人の数だけ存在する様々な「運命」が時に交わり、時に歩みをひとつにしていくその過程が「プログラム通り」に進行するよう、それらを管理・調整する役割を担う者たちがこの世界の何処かに存在しているかもしれません。その名も「運命調整局」。

という映画があるのですが、ご存知でしょうか?2011年公開の米国映画『The Adjustment Bureau』です。直訳するとそのまま『運命調整局』です。日本ではこの原題の一部をカタカナ表記した『アジャストメント』というタイトルで公開されました。こんな一般的に馴染みもなく内容も伝えきれない中途半端なカタカナ語タイトルで公開するくらいなら、そのまま日本語で『運命調整局』にした方が絶対に分かりやすいし観客の興味も引けたはずだと個人的には憤慨しています。尊敬する大好きな俳優マット・デイモンが主演していなかったら、僕も内容の想像すらつかないまま注意を払わず、素通りしていたような気がします。ちなみに、数多くの映画化作品の原作者としても知られるフィリップ・K・ディックによる短編が原作です(僕は読んでませんが)。

とりあえず映画の予告編をご紹介します。

こんな映画です。映画をジャンルでくくるのはあまり好きではありませんが、この作品を敢えてひとつのジャンルで括ってしまうとしたら、恋愛映画です。大人のためのお伽話、とでも言えばよいでしょうか。ドキドキハラハラしながら楽しんで観れる娯楽作品です。興味を持った方は是非。

この映画に登場する「運命調整局」なる存在、個人的にはなかなかのリアリティを感じました。僕が実際の自分の人生においてイメージする「調整局」の姿や行動は映画のそれとは少し違っていますが、この映画を観て以降、けっこうその存在を真面目に信じていたりもします。少なくとも自分自身の人生に関して言えば、「見えない誰かが調整してこうなった」としか思えない出来事が結構な頻度で発生していますし、そういう出来事が重なり合って紡ぎ出す縁のようなものに導かれたり押し出されたり囲い込まれたりする形で、これまで僕の人生は形作られてきました(特に高校を卒業して鳥取を離れて以降)。そもそも僕は(かれこれ10年くらい)神様の存在と導きを信じて生きている人間の一人なのですが、「運命調整局」的な存在の働きを前提にした方がかえって簡単に説明できてしまうようなことって、実は沢山あるように感じています(とはいえ何でも一概に「運命」や「神様」のせいにして思考そのものを拒絶するような態度はナシだと思いますが)。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、予告編で垣間見れる通り、この映画における「調整局」というのは主人公にとって主に「立ちはだかる」存在です。一方、僕がこの世界を生きていて感じる「調整局」というのは、時に立ちはだかり、時にうまく助けてくれたりするのですが、そもそもの意図としては常に僕のことを応援してくれている、という存在です。楽観的に過ぎるでしょうか?

この映画を観て、そんなことを周りの家族や友人と話し合ってみるのも面白いかもしれません。それと「調整局」の気配を感じたり探しながら生きる人生、けっこう面白いですよ。


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映画原作小説