相談に乗るという仕事

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昔から、よく人の相談に乗ります。現代的な言葉でいうところのカウンセリング、コーチング、メンタリングのようなことです。今年で30歳になりましたが、思い返せば高校生だった16歳の頃から、現在やっているのと殆ど同じ方法で誰かの相談に乗っていました。最初は同級生の悩み相談です。内容は恋愛をはじめとした人間関係や、進路や受験・勉強に関するものでした。高校卒業後に東京に移ってからは、やってくる相談の種類と幅が一気に増え、その後も経験を重ねるごとにますます内容が複雑化・深刻化していきました。もちろん相談者の年齢・性別・国籍等も多様化しました。ドラクエやバトル系の少年マンガと一緒で、世界はその時々の自分のレベル(成熟度)に合わせた課題・難題を常に用意してくる仕組みになってるんだな、と当時何度も感じた記憶があります。23歳くらいの頃には、関係の築き方に悩む海外の国際結婚カップルとか(この時は英語で相談に乗った)、「私の人生はこれで良かったのだろうか」と悩む60代の女性とか、いよいよ自分が相談相手になっているのが不思議なケースがたくさん出てきていました。それでも多くの場合は自分でも驚くほど正確に相手の状況や感覚・感情を理解・把握できていたし、その時点で必要かつ可能な範囲までの解決の道筋を示すこともできていて、そのまま現在に至ります。おそらく人の心や人生の問題に尋常ならざる強烈な関心があったこと、幸いにして一定の資質があったこと、そして何より高密度・高速度で場数を踏んだことが主な要因だったと思います。

元はと言えば、僕自身がただ色々な人の話を聴いて自分の視野や世界観を拡げたかっただけでした。鳥取の田舎で育ったという事実を自覚していたこともあり、高校卒業あたりから、自分が出会ったことのない種類の人との出会いを常に渇望するようになりました。その結果、学生の間はほとんど常に、人と出会っては色々なことを質問して聴かせてもらう、ということばかりやって生活していました。そのうちに何か気が付いたらフリーの相談屋みたいになっていたのです。で、しまいには自ら構えた場所(上の写真)で人の相談に乗るようになっていました。

というわけで今回は、僕が誰かの相談に乗る際に自然と実践してきたことを、言語化して紹介することにします。僕が寺子屋で指導した教え子の中にも、人の相談に乗る仕事を将来の選択肢として考えている生徒がいますが、例えばそういうタイプの読者の方の参考になれば幸いです。

おそらく改めて言語化しても「当たり前のこと」ばかりになる気がしますが、その「当たり前」を言語化して形にしておくことにも意味はあると思うので、とりあえずやってみます。

【僕が相談に乗る時にやっとること】

  1. 相手がリラックスできる環境で話を聴く。相手を総合的に観察する。
  2. 相手が見ているのと同じ感覚・視座で世界を眺めて、その有り様を相手が対象化して認識できるよう可視化する(言語や絵図で表現)。
  3. 相手が生活している社会・環境における価値判断・行動選択の物差し(相手を外側から取り巻いている世界観・物差し)をひとつひとつ対象化・可視化する。
  4. 相手の主観的世界観の物差しと、相手を外側から取り巻いている物差しとを比較し、相違点や共通点を可視化し認識してもらう。
  5. 以上を踏まえて、相手にとって本来最適な世界観・物差し(つまり生き方)について話し合う。この際、相手自身が「望むもの」と「必要なもの(最適なもの)」との区別ができていないケースが多いため、それを踏まえてこちらからも相手の価値観・物差しの変更・更新を提案する。
  6. 当人にとって最適な世界観に合った人生を送るために、何を変えず、何を変えることが必要なのかを話し合う。
  7. 導き出された結論が変化に向けた決意・行動を伴うものである場合、どういうペースでその変化を実現していくかを話し合う。少しずつ変えるのか、思い切って変えるのか。(どのみちどこかの段階で思い切る必要はあるのだが、その段階にすぐ行ける人と行けない人がいる)
  8. 変化に向けた決意・行動を実現しようとした際に発生する精神的ストレス(不安、恐怖など)についても認識・自覚してもらった上で、それらをひとつひとつ明確に可視化していく。
  9. 可視化した「必要な変化のための決意・行動に伴うストレス」を、「決意も行動もしなかった場合に最終的に感じるストレス」と比較する。(ここで前者のストレスの方が明らかに大きく負担だと断定できた場合は、「消極的現状維持」から「積極的現状維持」に向けた変化のための決意・行動を目指すことになる。つまり程度と方向性の違いはあれ、何らかの価値観の更新は必要になる)
  10. 決意・行動に変えてもらう。
  11. 過去のパターンへの「揺り戻し」に対する予防とフォローアップ。
  12. 実際の行動によって新たに分かったこと、見えたことについて話し合う。新たな「現在」をベースに角度や方向の再調整・微調整を行う。

以上です。「現状打破」や「解決」を目指した相談に乗る場合、大体これが僕がいつも踏んでいるプロセスです(どちらかというと男性の方がよく見落としがちなのですが、必ずしも「解決」を目的にする必要のないケースも多々あります)。いざ書いてみると、各項目ごとに更に詳しく説明をしないと理解しきれない部分もあるかもしれませんね。

これらは皆、場数を踏む中で自然に身につけてやってきた方法なのですが、こうして言語化してしまうと、ひとつのマニュアルとしての姿形を否応なく獲得します。こうなると逆に気をつけなければならないのは「マニュアル先行」のリスクです。ですので、誰かの相談に乗るための参考にとここまで読んできてくださった方は、「上の方法論の中には表現されていないけれど、実は書かれたこと以上に本質的で大切なこと」が存在するという事実も絶対に忘れないでください。つまり、ここに書いたことを読みながら単に方法論に従って人と向かい合ったって何の解決もできません、ということです。当たり前のことですが、あくまで上に述べたのは方法論という技術的側面に過ぎず、それを支えるもの、包むものの存在がなければ有効に機能することもありません。あえて一言で表現するならば、「支えるもの」とは「感性・感受性」であり、「包むもの」とは「想像力」です。

まだまだ説明不足な気はしますが、昼寝したいのでここまでにします。参考になれば幸いです。眠くなってきました。おやすみなさい。