人生ゲーム寺子屋

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今日の寺子屋は、久しぶりに人生ゲームで遊びました。最初は別のことをやろうと思っていたのですが、会った途端にお馴染みのゾウくんが「人生ゲームがしたい」と言って譲らないので、人生ゲームになりました。と言っても、寺子屋に配備しているゲーム類は教材として有効なものに限定しているので、自分からやりたいと言ってくれるのは結構なことです。状況や彼らの様子も見ながら、その時に応じて彼らの言う通りにしたりしなかったりするようにしています。

ところで人生ゲームって、教材としてかなり優れています。
まずお金の計算。お金の出入りに関して自分で計算してもらうようにしているのですが、勝敗がかかっているのでどの子も真剣にやります。特にゾウくんは、寺子屋に通い始めたばかりの頃は本当に計算が苦手な子だったのですが、人生ゲームになると前向きに取り組んでくれて、途中からはあえて彼に銀行役をやってもらうようにしました。今日も彼が銀行役だったのですが、計算ミスもなくしっかり務めてくれました。
次に漢字。止まったマス目の内容を毎回自分で音読してもらうのですが、けっこう読めない漢字が出てきます。その際に(今日はやりませんでしたが)知らなかった漢字をそれぞれ5回ずつくらい書いてもらったりします。「婚約」「火災」「保険」「手形」とか、何だかいやにリアルな単語ばっか並ぶので面白いです(笑)。
以上のような読み書き計算の他にも、社会の仕組みや成り立ち等々について学ぶことができます。例えば今日は「株」「保険」「税金」について勉強しました。これらは具体的な事実を知識として学ぶというより、まず概念として理解してもらったり、それぞれが社会において需要を獲得して成立する過程を想像して追体験してもらう、といった形で学びます。たとえば税金については今日はこんな質問から始めました。

「はい!自分たちの物じゃないけど、生活する上でそれがないと困るもので、誰かが作ってくれてるものってなーんだ?!」

こういうのはまず質問の意味自体を読み取るのに少し時間がかかりますが、そこは少しずつ補足を加えて、ヒントを出しながら彼らが自分で考えていくのを手伝います。今日はまず「道路」に辿り着きました。あ、少し話の本筋からは逸れますが、この後のやり取りが面白かったので、ちょっと紹介します。

「道路って自分で作らんよな。誰が作るん?」
「おっちゃん!」
「(笑)そうだな!正解!おっちゃんだな!わりとおっちゃんが多いな!でも実はな、そのおっちゃん達も実は誰か別の人から頼まれて道路とか作っとるんよ。」
「え、そうなん?」
「うん、そうなんよ。誰が頼んだと思う?」
「…………神様?」

これ「上の人」という意味ではなかなかイイ線いってる答えですよね。ゾウ君はこういう想像力豊かな答えをけっこうな頻度で出してきます。これは立派な個性です。まあでもとりあえず人間の世界の話なので「その答えはマジで面白いけど、それ考えたらキリがないけえ、とりあえず人間で考えよう!人間だったら誰でしょう?」と返します。すると返ってきた答えは「大統領」でした。コウモリ君も「大統領だ!」と声を合わせます。ついでに書くとその後のやり取りはこんな感じです。

「日本って大統領おらんで」
「え……!そうなん?」
「そうなんよ」
「じゃあアベソーリーは?」
「ああ、アベソーリーはな、ソーリーなんよ。ソーリー。大統領とは違うんよ」

コウモリ君がなぜ「総理」を「ソーリー」と発音したのかは分かりませんが、何か面白かったのでそこはそのままにしました(笑)。

と、まあこんな感じのやり取りをしながら、「税金」というのがそもそもどういうお金で、どういう過程で必要が出てくるものなのか、みたいなことを追体験的に理解してもらいます。他にも色々想像を働かせてもらったり説明した結果、2人とも「税金」=「みんなのために使うみんなのお金」という結論に達して、理解&納得したようでした。

こんな感じで他の「株」やら「保険」についても自分達の頭を使って考えてもらいながら説明します。株については「会社に値段があるって知っとる?」から始めました。保険は最初に出てきたのが自動車保険だったので「車で事故した時に車の修理代を代わりに払ってくれる人がおるんだけど、何で知らん人なのにそんなことしてくれるん?」という問いから始めました。というわけで、こういう方法で解説していると彼らも一緒に色々考えてくれるのですが、そうは言っても元々は遊びたくて人生ゲームをやってるので、「お勉強」になってしまわないようギリギリのところで勝負することになります。「なあ、早く次に進みたい!」と言われたらいったん試合終了です。要は目の前の少年達の集中力と根気の限界を見極めながら、いかに遊びの中に学びの要素を含ませて賢くなってもらうか、という勝負なのですが、これが毎回本当に頭を使う部分で、寺子屋教師としての醍醐味でもあります。機転と瞬発力が常に要求されるので、なかなか気が抜けません。

といった感じで、人生ゲームでわいわい盛り上がりながら、今日も色んなことを知らん間に学んでくれました。1年生のコウモリ君、最後に「税金って何?」って聞いたら「みんなのお金!」「みんなで使うお金!」と叫んでいました。これを聞いてると逆に僕の方が「あ、そうですよね。仰る通りです」みたいな気分になります(笑)。何より彼自身が自分で頭を使って納得しながら辿り着いた表現で、自信を持って答えられている、これが大事です。

ちなみにゲームはコウモリ君の完全な一人勝ちで、2位がゾウ君、僕は最下位でした。僕は途中で遊びに来てくれた教え子のメタル君(19)に後半は代わってもらいましたが、交代策も空しく結局最後まで最下位でした。僕も彼も一切手抜きはしてないんですけどね。コウモリ君、先週の将棋崩しに続いての真剣勝負での勝利に、またひとつ自信を深めている様子でした。

というわけで、人生ゲーム、家庭での教育ツールとしてもオススメです。ちなみに僕は色々ある人生ゲームの中でも「初代復刻版」という最もクラシックなものを使っていますが、特にどれでないといけないというのはないと思います。そのうちオリジナル作ろうかしら。

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