飛行機で仲良くなったポーランドっ子が鳥取にやって来る(2)

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前回に引き続き、鳥取にやって来たポーランド人姉妹、マルレーナ(ドバイ在住)とヘレナ(ポーランド在住)のお話です。二人は7日にドバイから日本に到着して、数日東京で過ごした後で大阪で1日、京都で1日を過ごし、それから一昨日(13日)の正午に鳥取に到着し、昨日(14日)の15時40分のバスで関西空港に向かい、夜中の便で再びドバイに向けて旅立ちました。人口最少県民として日々自虐ネタを連発し続ける鳥取の皆さん、東京・大阪・京都・鳥取っていうスケジュールですよ。どうですか。東京・大阪・京都にサラッと続いて並んでます。ちょっと、僕らの時代が近付いてきたんじゃないですか。

さて、前回は彼女達が鳥取にやってきた簡単ないきさつと、この2人の出身国ポーランドの簡単な紹介を行った上で、この度の鳥取ツアーの内容を少しだけお伝えしましたが、今回はその続きです。「海外からの客人をどうもてなすか」というひとつの参考例としてお楽しみいただければと思います。順を追ってお伝えする前に、まず結論というか、今回の鳥取案内における僕の基本方針を記しておきます。

こちらが実際の普段の生活で価値を見出しているモノや場所を、そのまま自然体で案内する

つまり、自分達も普段行かないような場所に無理して連れて行ったりせず、こちらの日常の風景にそのまま入ってきてもらう、ということです。「今回の鳥取案内」と書いたのは、それは案内の方針というのがその時の相手によって変わるからです。趣味や生活感覚がある程度一致している、世代も近い友人を案内するケースにおいては、特に上の方針が力を発揮します。それでは具体的に説明します。

砂丘に行って、友人の経営する喫茶店に案内した後は、鳥取県東部地区随一の漁港である賀露港(かろこう)の市場に向かいました。時刻も午後だったので市場そのものはもう片付け始めている頃でしたが、ここに2人を連れて行ったのは市場そのもの以上に、とっても美味しいジェラートのお店があるからです。橋本牧場という、鳥取市鹿野町にある同名の牧場による直営ジェラート店です。市場そのものも勿論案内するだけの価値がある場所なのですが、今回の場合、二人は既に東京の築地市場を訪れていたこともあり、「一にジェラート、二に市場」くらいの感覚で案内しました。いざ行ってみるとマルレーナが生牡蠣に興味を持って、その場でひとつ買って頬張りました。

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この市場、僕が住んでいる場所から車で約10分のところにあるのですが、県外出身の妻に言わせればとんでもない環境だということです。特に彼女は日本の数少ない内陸地である埼玉の出身なので、いつでも気軽に漁港の市場に行ける環境というのは感動的なものだそう。特に県庁所在地であるような仮にも「都市(まち)」である場所でこんなに自然の幸が近いのが素晴らしいと。だそうです。県外の、特に内陸地にお住いの皆さんは是非、鳥取市移住をご検討ください。

あ、また移住の話に逸れてしまった。

ジェラートの話でしたね。

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牧場の自家製ミルクをふんだんに使ったボリュームたっぷりのジェラートが、ダブルで360円。とっても贅沢な味をこの値段で楽しめるのです。2人とも気に入ってくれたようです。

ジェラートの後は、言わずと知れた地方都市の象徴的ショッピングモール「イオンモール」(僕ら夫婦は今でも「ジャスコ」と呼びますが)に向かいました。帝国主義的性格を有したグローバル企業のような存在として各地方都市に君臨するジャスコですが、家から近いということもあり、僕らも何だかんだでお世話になっています(野菜は農協の店で買う等、基本的には地元の店を使っていますが、必要に応じてジャスコも普通に使います)。今回ここに彼女達を連れて行ったのは、まず100円ショップに案内するためです。店内に入る時に「ここにあるもの全部100円だよ」と伝えたところ2人とも衝撃を受けたようで、目を輝かせて店内をウロウロ歩き回っていました。高校生の妹ヘレナ曰く「ここで1日過ごせる」とのことです。お姉さんのマルレーナも、ご覧の通りの表情です。

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ていうかこの写真、お店のポスターに使えそうなくらい絵になってますね。Seriaからオファー来ないかしら。さて、彼女達が選んだ商品の一部をご紹介します。

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茶碗を買ったのはヘレナです。彼女は他に弁当箱も買っていました。あとはおにぎりケースを買うかどうかギリギリまで迷っていました(結局やめたみたい)。マルレーナは仕事に使うと言って靴のソールを買った他、あとは2人とも友達へのお土産に箸などを買っていました。

イオンモールの後は、「温泉に入りたい」とのことだったので市内の温泉に案内しました。海外、特に西洋諸国出身の人は人前で裸になる温泉の仕組みに馴染めない人が多いのですが、それを聞いてみたところ「今回の旅の間に一度温泉に入って、最初は戸惑ったけど慣れた」とのことでした。鳥取は知られざる温泉地で、種類も大きさも様々な浴場が点在しているのですが、今回僕が選んだのはぽかぽか温泉です。県外資本の浴場なので完全に地元、というわけではないですが、ちゃんと温泉ですし、何よりミストサウナをはじめ浴槽の種類も豊富でエンターテインメント性が高いので、温泉初心者の彼女達には最適だと思ったからです。もう少しマニアックな温泉好きを案内する時はまた違った選択肢になってきますが、いずれにせよ近場に複数の浴場が在る鳥取の環境は、最高です。

二人が温泉に入っている間、僕は寺子屋に戻ってひと仕事し、終わった後で再び迎えに行きました。

夕食の場所には、チェーンの定食屋大戸屋を選びました夜遅くまで開いていたことと、「ごはん・味噌汁・漬物・メイン」という日本の典型的な定食セットが楽しめるというのが選んだ理由です。それと、僕自身が東京での学生時代に大戸屋をよく利用していて、かつ当時外国の友人を連れて行った時に気に入ってもらうことが多かったというのも決め手です。これも上に記した「自分がよく知っている場所」という方針に基づく選択です。マルレーナは牛肉と野菜の炒め物の定食、ヘレナはばくだん丼(オクラ・とろろ・納豆・マグロ・生卵の丼)をそれぞれ選びました。納豆が食べられるかどうか事前に確認したところ「問題ない」とのことで、実際普通に食べていたのですが、上に載っける用に付いてきた鰹節が気持ち悪くて食べられないと言ったのが意外で面白かったです。なんか前の日にたこ焼きの上にかけられた鰹節を見て以来トラウマになっていたようなのですが、日本人の一般的な感覚からすると「納豆の方がムズいだろ」と言いたくなります。この夕食には、僕の地元の友人2人にも参加してもらったので、人数も増えて楽しい時間になりました。その友人は英語は全く話せないのに快く誘いに応じてくれたばかりか、勢いと心意気で果敢に2人にも話しかけてくれたので、僕としても嬉しい気持ちになりました(お辞儀して頭をぶつけるギャグで2人の心を掴んでいました)。

夕食を終えたところで、二人をホテルまで送って1日目終了です。妻が妊娠し長男が誕生するまでは、遊びに来てくれた各国友人達に僕らのアパートに泊まってもらっていましたが、さすがに今の状況では難しいので(こちらに余裕が持てないだけでなく、相手にも気を遣わせてしまいます)ホテルに泊まってもらいました。宿泊にせよ食事にせよ案内する場所にせよ、とにかく「無理をしない」「背伸びしない」というのも、客人をもてなす時の大事な鉄則だと思っています。海外からのお客さんだからといって、変にかしこまったり構えてしまうと、かえってぎこちないガイドになってしまいます。相手も望んでいないようなレベルやスケールのものを無理して提供する必要はないし、自然体で相手の期待に応え、時に想像を超えていくのが一番です。

それと個人的にいつも気をつけているのは、「急いで色々こなすような案内の仕方をしない」ということです。そんなのそもそも鳥取の役割じゃない。海外からの友人は鳥取の前後に有名な大都市を訪ねることが多いですし、日本人の友人ともなると更に明確に「田舎的要素」(休憩・のんびり・リラックス)を求めて来るケースが殆どなので、そこでこちらが「頑張って」しまっては元も子もないわけです。よほど明確に求めているものがない限りは、食事もゆっくり摂って、移動ものんびりして、プランも適当にその都度変化させながら肩の力を入れずに案内します。これが大事なのです。実際今回迎えたマルレーナも、東京の雰囲気が全くしっくり来なかったようで「一歩歩くごとにエネルギー吸い取られた」と言っていたので、鳥取では意識的にゆっくり過ごしてもらえるように心掛けました。

ところで、この「県外・海外から友人を鳥取に招いて案内する」という活動、大学生になって東京に移った時からもう10年以上、半ばライフワークのように続けています。もちろん今は結婚して子供もいる立場なので、頻度や程度には大きな変化がありますが、それ以前から学生時代であれ結婚後であれ、毎年(時には毎シーズン)入れ替わり立ち替わり誰かを迎えてきました。生活に直結する経済的利益を生み出す生産活動を「生業」と呼び、必ずしも(特に短期的には)利益に繋がらないけれど一種の種まきとして未来のために行う生産活動を「仕事」と呼ぶ、という考え方を以前本で読んだことがあります。僕はこの「鳥取に来てもらって楽しんでもらう活動」を完全に趣味でやってきていますが、上の定義に従うならば、半ば「仕事」に近い意識でずっと取り組んできました。もちろん、何の個人的利益も求めていませんし、趣味でやっているわけですからそもそもそんなもの発生しません。でも、単に自分自身が心から楽しいということに加えて、何か意味のあることをやれているようなちょっとしたやりがいのようなものも、同時に感じながらやってきているのです。まあ、一言で言えば暇人ってことですが、実はこの「暇」ということに僕は一種の自負と誇りさえ感じて生きています。今後もプロ意識を持ったハイレベルな暇人としてこういう活動にしっかり携われるよう、生業は生業でしっかりやりながら、ますます自分を磨いていこうと思っている今日この頃です。

それでは、「ポーランドっ子シリーズ」第3回に続きます。あまり次回予告してもその通りに書いた試しがないので気が引けますが、一応2日目の様子と彼女達の地元の街について書くつもりです。お付き合いありがとうございます。

それではまた。