母校の女子サッカー部を訪問した話

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もう数ヶ月前のことになりますが、母校である鳥取西高の女子サッカー部を訪問しました。

1時間ほど教室でトークセッションを行い、その後は部活の練習に一緒に参加してミニゲームに汗を流しました。現役の高校生達としっかり向き合うのは、以前開いていた私塾の生徒達が2014年春に卒業して以来になるので、約5年ぶりということになります。

彼女達との出会いは、暮れにサッカーの練習試合で対戦したことでした。地元プロサッカークラブのガイナーレ鳥取が開催している「大人スクール」なるものに僕も生徒として通っていたのですが、そのメンバーと鳥取西高女子サッカー部で練習試合を行うことになったのです。きっかけはスクールメンバーの一人の娘さんが、同サッカー部でキャプテンを務めていたことだったようです。その娘さん自身は当時既に3年生で、既にサッカー部は引退して受験生となっていたようでしたが、その後輩である1・2年生のメンバー達と、我々大人達で試合を行いました。その際に顧問の先生とお話する機会があり、後日改めて学校にお邪魔させて頂くことになったのでした。

鳥取県内に女子サッカー部を有する高校は数える程しかなく、その中でも鳥取西高は決して強豪の部類にはまだ入っていないチームのようでしたが、それでも実際に対戦した時に感じた彼女達のひたむきさや真剣さには胸を打たれるものがあり、何か何でもいいから彼女達の役に立ちたいな、と自然に思わせてくれる雰囲気を持ったチームでした。

母校訪問は大学生だった20代前半を最後に途切れていたので、約10年振りでした。当時は東京で学生生活を送る身ながら、帰省の度に授業にゲストとして参加するなど頻繁に顔を出していましたが、逆に大学を卒業して完全に生活拠点を鳥取に移してから約7年間は、全くと言ってほいほど直接の接点は生まれませんでした。それがいざ鳥取を離れて再び関東に拠点を移すことを決めたタイミングで再訪することになるのですから、縁というのは分からないものです。もはや二度と訪ねることもないんじゃなかろうかと思っていた、懐かしい場所に再び自分を向かわせてくれたのがサッカーという存在であったことにも色々と考えさせられます。

人生、何がきっかけで動かされ展開していくかというのは人それぞれだと思いますが、少なくとも僕の場合、改めて振り返るとサッカーによって動かされ、きっかけを与えらえ、導かれることが非常に多い人生を送っていることに気付かされます。チームに所属して真剣にサッカーをプレーしたのは小学生時代のみだったわりに、随分とサッカーに振り回されたり、助けられたりする人生です(昔は振り回されることの方が多かったですが、最近はお世話になることが増えました)。そんな半生ですから、これは単に一般論としてだけでなく、体験的な実感として、サッカーの動かす力、そして繋ぐ力の計り知れなさを年々感じています。

そんなことを感じながら今年1月、約10年振りに母校を訪れ、十数名の女子サッカー部員の生徒達と交流しました。前述のように、はじめは空いていた教室で1時間ほどトークセッションのようなものを行いました。とはいえ、よく分からない大人が急に現れて一方的に分かったようなこと言ってきても迷惑だろうと思ったりもするので、何か予め用意した言葉を伝えるというよりは、フラットな目線で互いに「知り合う」ということを優先しました(今回が最初で最後の付き合いにはならないだろうと信じつつ)。簡単な自己紹介をした上で、こちらから色々質問しながら、皆で雑談するような形でゆったりのんびりと時間を過ごしました。確認した限り2人でしたが、海外に強い興味を持っている子もいたことを個人的に嬉しく感じました。

トークの後は外に出て、顧問の先生も一緒に皆でミニゲームを何本か行いました。幸運にも冬の鳥取には珍しい晴天で気持ちよく走り回れましたが、久しぶりの土のグラウンドに足が馴染まなかったのか、気が付いたら激しく2回転倒していました。皆の迷惑にならないよう、次はもう少し練習してコンディション整えてからお邪魔しないといけませんね。教室でのセッションと同様、部員の皆が温かく迎えてくれたお陰で、僕も楽しくプレーさせてもらいました。そして皆、当たり前のように一生懸命練習に取り組んでいて、改めて良いメンバー、良いチームだなと感じました。もし鳥取に住み続けていたら、もっと何か、例えば定期的にでもお手伝いさせてもらいたかったなと、自然とそんな気持ちにさせられました。

ひょんなことからサッカーに、しかもプロサッカーの世界に仕事で関わるようになって、もう何年も経ちます。それはそれで楽しくエキサイティングな世界ですが、今回お邪魔した10代の子達の部活の世界、お金もビジネスも何も絡まない純然たるサッカーそのものだけの世界には、当然と言えば当然ですが、逆にプロの世界にはない美しさ、楽しさ、気持ち良さを感じました。いわゆる「大人になっていつしか忘れていた大切な何かを思い出す」的な感覚ってこれかしら、みたいな気持ちになりました。特に何かを忘れていたつもりはなかったですが、それでもやはり、彼女達が体現するシンプルで純度の高いひたむきさにはとても敵いませんでした。

年齢も考え方もいよいよ大人になってきたことを自覚する今の自分にとって、今回の彼女達との出会いは素晴らしい機会でした。逆に彼女達にとっても、僕との出会いが何かしら前向きな意味のあるものであったことを願うばかりです。

高校での部活動の集大成にあたる夏の総体は、今月下旬に予定されています。

愛すべき後輩達の健闘と勝利を、何より悔いの残らぬ全力の戦いを心から祈りつつ、僕も全力で応援しようと想います。