先月南米から帰ってくる時の飛行機で、昨年からずっと気になっていた映画をやっと観ることができました。昨年インドで公開された『pk』という作品です。この監督&主演俳優の前作が、僕が人生で出会った中で断トツ一番の映画だったので、新作を観るのをずっと楽しみにしていたのです。
ストーリーを簡単に紹介すると、
地球の調査にやってきた宇宙人が、迎えの宇宙船を呼ぶための通信用ペンダントを到着早々に盗まれてしまい、頑張って探す。
という内容です。予告編を紹介します。ヒンディー語なので何言ってるか僕も分かりませんが、映画の雰囲気は伝わると思います。
僕がこれまでに観た何本かのインド映画と同じく、前半でアホみたいに笑わされた後、後半で一気に心を持って行かれて思い切り泣かされました。そして大いに考えさせられました。宇宙人が主人公のコメディ映画ですが、作品を貫くテーマは「神様はどこにいるか」です。長時間フライトだったということもあり、1回通しで観た後に飛ばし飛ばしで更に2回くらい観てしまったのですが、すぐ後ろの席に座っていたインド人男性が密かにその様子を見ていたらしく、最後に降りる時に笑いながらツッコミを入れてきました。映画は人を繋げますね。ちなみにこの映画のヒロイン、とってもキュートでした。インド映画では珍しいショートヘアのヒロインです。
そういえば、インド映画といえば「あー、あの踊るやつでしょ(笑)」という一言で一括りにして完全にナメてる日本人がまだまだ多く、かく言う僕も昨年まではそんな野郎の一人だったのですが、ここではっきり伝えておきます。インド映画を舐めてる奴らは人生を損してる、と。
多くの方にとってインド映画のイメージといえば、インドカレー屋のテレビで流れてるミュージックビデオのあの感じでしょう。あの「おいおい今時マジでそれやっちゃってんのかよ、ダサ過ぎっしょ」的な「ネタ感」です。それはハリウッド映画に対して多くの日本人が抱くイメージとは真逆と言ってもいい種類のものですね。そう思ってる皆さん、世界は皆さんが思ってるより遥かに速くダイナミックに動いていますよ。確かにインド映画では必ず踊ります。踊りますし、踊りのスタイルも日本人の一般的な感覚でいうとダサめのものは確かに多いです。作品によっては「ダンス長えよ」と思うこともあります。ただ、そこで思考停止に陥ってしまうのは余りにも勿体ないのです。インド映画の良作におけるダンスシーンには、ちゃんと文脈と物語があるのです。そこを見誤っちゃいけません。場合によっては、インド映画を通じて「ダサい」という感覚そのものが変化していくことでしょう。
インド映画は基本的に「ベタ」です。個人的にはこの「ベタさ」をどう捉えるかがインド映画の好き嫌いの分かれ目かなと思います。僕の感覚では観ていて興醒めするようなベタではなく、ここまで徹底して突き抜けると爽快で感動的、という種類のベタです。もちろん監督の技量にもよると思いますが、インド映画の良作は「洗練されたベタ」が詰まったものだと僕は受け止めています。
それともうひとつ。インド映画は多くの日本人が考えているよりずっと深遠で、深い物語を伝えてきます。笑いの渦に飲まれ、ベタな物語に持って行かれ、気がつくと魂に触れる「生き死に」の問題の真ん中に連れて行かれている。これこそが僕が知るインド映画の姿です。毎度「やられた!」と唸りながら、涙と笑顔が混ざった顔で魂が揺さぶられたことを実感するのです。
ここまで読んで、まだ疑いを抱えながらも「そこまで言うなら」とちょっと思ってくださった読者の方がいらしたら、ビデオ屋に行って『きっと、うまくいく』という映画を借りて来てください。あるいは思い切ってAmazonで買ってみてください。昨年僕の寺子屋に通っていた高3生4名に鑑賞させたところ、全員が激ハマりでした。中にはこの映画で人生観に大きな影響を受けた子もいます(ていうか全員)。この作品は、人生や自分の現状に行き詰まりを感じてる方、迷いや不安と戦ってる方に僕が最もオススメしたい作品でもあります。インド映画に抵抗を感じている方、人生を変えてくれる一本と出会いたい方は、騙されたと思って是非鑑賞してみてください。