今年のブラジル滞在中にお世話になっていたネイマール学院が、日本時間の昨日朝、同学院の開校1周年を記念して公式ソングを制作・発表しました。ネットで検索したら僅かに日本語ニュースも出ていますが、残念なことに「ネイマールが歌手デビューして1stシングルをリリース」みたいな取り上げ方になっています。こういう風に書いた方がニュースとして目を引くと思っているのでしょうか。実際には曲を発表したのは「サッカー選手ネイマール」でなく、彼がブラジルで運営している「Instituto Neymar Jr.(ネイマール学院)」という学校です。確かに彼も一部歌ったり喋ったりしていますが、主に歌っているのはブラジルの人気歌手達です。つまり、ネイマールが「歌手として音楽業界に進出」したのでなく、彼が既に取り組んでいた教育事業の一環として楽曲制作が行われ、そのプロジェクトに自ら参加したというのがこのニュース本来の事実です。と、最低限の情報だけ確認したところで、肝心の楽曲を早速紹介します。音楽を伝える場で御託は野暮ですからね。こちらです。タイトルは「O Amor Ta Aí(愛はそこに)」。
ビデオ冒頭で紹介されているのは、ネイマール学院の生徒アレクサンデル君(12)とその母親のフラヴィアさんです。お母さんが息子への愛情を語っています。このネイマール学院は総勢2400人の生徒を受け入れているのですが、主に以下の3つの条件を全て満たしていることが入学の条件です。
・世帯月収が一人平均140レアル(約5600円)以下の家庭の7〜14歳
・ネイマール学院と提携する地元の4つの公立校の児童生徒で、学校の出席率が9割に達していること
・保護者も同学院のプログラム(職業訓練・講演等)に参加すること
学校の所在地はサンパウロ州プライア・グランジ市ジャルジン・グロリア地区の、ネイマールが少年時代を過ごした家から数ブロックほど離れた場所です。一家はネイマールがサッカーで成功するまでは大変な経済苦の中で生活していて、その頃に住んでいた地区です。僕は今年の5〜7月、実際にネイマール学院に通って現地で色々活動していたのですが、確かにこの学校がなかったらなかなか一人では近づけない場所でした。この学校から遠くない場所に住んでいる日系ブラジル人の青年と親しくなったのですが、聞けばやはり若年層のドラッグ使用が常態化しているとのことです。1年前に学校ができたことで、少なくともその周りの地域は随分穏やかになったといいます。また、ネイマールが作った学校でなければとっくに落書きや破損だらけになっていただろうということです。いずれも想像に難くない話です。ブラジルという国の大きさや絶望的なまでの社会格差を目の当たりにすると、2400人の生徒とその保護者を受け入れる同学院さえ大海の一滴に過ぎないように感じますが、それでも一滴ずつでも形にしていかないと社会も世界も変わりようがありません。ネイマール1人の出現でこれだけのものがひとつ形になったのだから、次の1人、その次の1人を生み出すためにもこの学校には意味があるはずだ、ということを現場の英語教師と話していました。ちなみにこの学校、「ネイマール学院」と銘打っていますがいわゆるサッカースクールではありません。開校にあたってネイマールさん(ネイマールのお父さん)が「この学校の目的はプロサッカー選手を育てることでなく、市民を育てることだ」とはっきり宣言しています。
あ、音楽の話でしたね。せっかくなので歌っている人達も名前だけ紹介しておきます。検索しやすいようにポルトガル語表記で書いておくので、興味のある方は調べてみてください。英語の洋楽とはまた違った世界が開けてきますよ。

Thaeme & Thiago

Alexandre Pires

Claudia Leitte

Lucas Lucco

Anitta

Léo Santana

Thiaguinho

Wesley Safadão

Vitinho(Onde:20)

Neymar Jr.
以上、ネイマール学院公式ソングのご紹介でした。あ、歌詞についても書けばよかった。気が向いたら改めてちゃんと書きますが、「愛はそこに」っていう内容で、いい歌詞です。それではまた。