英語がちゃんと身につく『速読英単語』の使い方

※この記事は、本ブログの一つ前の投稿速読英単語』の素晴らしさを伝えたい の続編です。「そもそも『速読英単語』って何?どんな参考書なの?」という方はぜひ、まず前編からお読みください。


さて、前回の記事では『速読英単語』(以下「速単」)という参考書をご紹介しつつ、その素晴らしさについて解説を行いました。仮にその内容に共感いただけたとして、次に出てくるのは当然「じゃあ具体的にどう使えばいいの?」という話ですよね。今回はその部分を具体的に説明していきたいと思います。


STEP0:目標をどこに置くか

ただ、具体的な話に入る前にひとつ、前提として最初に確認しておきたいことがあります。それは同じ参考書でも、一体どこを目標とした使い方なのかという点です。前回の記事でも強調しましたが、僕はこの「速単」シリーズを単なる受験参考書としては捉えていません。もちろん受験を基本目的とした参考書であることに間違いはないのですが、実はその更に先の、実際に生活の中で英語を使いこなしていくことを目指す上でも、極めて有用なテキストなのです。

ですから本記事ではタイトルにもある通り、単なる入試合格や資格取得でなく、「英語がちゃんと身につく」ことを目標とした「速単」の使い方、という意識で解説していきます。受験生であれ英検やTOEICに燃える学生や社会人の方であれ、英語をやる以上はあくまで実人生の中で使いこなすことこそ目指してほしいですし、(途中に入試や資格というステップがあるとしても)最終的にはその目標のための参考書として「速単」をとらえていただきたいと思います。


STEP1:発音は大丈夫か

それでは具体的な話に入ります。

まず躊躇なく理想を言わせてもらうと、実は「速単」に本格的に取り掛かる前に是非やっていただきたいことがあります。

発音の習得です。

というのも、「速単」のポテンシャルを余すところなく引き出し完全な形で発揮させるには、音読という要素が不可欠なのです。というか「速単」に限らず、徹底した音読なくして言語の習得は叶いません。しかしだからと言って闇雲に音読すればよいのかというと決してそうではなく、言語習得のトレーニングとしての音読に意味を持たせるためには、まず基本的な発音を習得していることが前提となります。そうでなければ、その言語のリズムや呼吸も含めて自分のものとしていくことができませんし、自然に話せるようになるまで余計に時間がかかってしまいます。もちろん僕の個人的な意見に過ぎませんが、この発音というポイントに関しては絶対に早い段階で向き合っておくことをオススメします。

では、ひとまずこれに納得していただいたとして、具体的に発音の習得ってどうすればいいの?という話ですが、これについては実はシンプルかつ明確な回答があります。

フォニックスと発音記号をマスターすることです。

フォニックス(Phonics)というのは、一言で説明すると英語の文字と発音を一致させるトレーニング方法のことです。これを体得すると、初見の単語でもスムーズかつ正確に発音できるようになります。個人的には日本人が英語を習得する上で真っ先に取り組むべきものだと思っているのですが、学校教育ではまず教わりません。

また発音記号というのは、英語の発音の仕方を示した記号のことで、例えば cat という単語の発音記号は[kæt]になります。英和辞書を引くと単語の脇に付してあります。「速単」も同じで、単語ページを開くと各見出し語の下に載っています。つまり、発音記号の読み方(発音の仕方)を体得できれば、辞書を引くだけで正確な発音を把握・練習できるのです。

この2つを自分のものにしながら、まずは英語の音を正確に発音できるようしっかりトレーニングを行ってください。発音の習得は、運動前の体操やストレッチくらい最も基本的かつ不可欠な要素ので、手抜きせずしっかり取り組むことをオススメします。


STEP2:まず耳から入る

語学というのは、とにかく舌と耳をしっかり作ることが肝心です。ですので、舌=発音を整えたら、次は耳=リスニングです。「速単」は別売ながらCDも出ているので、これを活用しない手はありません。

というわけで、いよいよテキストを開く前に、その日学習する英文の音声を聞いてみることをオススメします。聞くのは単語の音声でなく、メインの文章の音声です(「速単」は約60〜70話の英語コラムみたいな英文を集めた仕様になっているので、その英文本文を聞くということ)。内容をどのくらい理解できるか、ぜひ集中して聞いてみて下さい。たとえ話の内容を掴めなくても、聞き取れる単語があるかどうか、あれば何単語くらい拾えるか、チェックしてみてみましょう。あるいは意味の理解は追いつかなくても、音だけなら拾える文があるかもしれません。その際は、聞き取れた文や単語を書き取ってみてもよいでしょう。

始めたばかりの頃は、何も分からず単語もひとつも聞き取れない、という結果になることもあると思います。でもそれはそれで構いません。「最初に聞いた時はこんなに分からんかった」という事実を確認すること自体に大きな意味があるからです。後でスムーズに分かるようになった時、自分の成長を実感と共に確認できます。

また英文は1回だけでなく、何度か繰り返し聞いてみてください。1ページ分の英文をフルで聞いてもそこまで時間はかかりませんし、繰り返すことでだんだん聞き取れるようになったり、あるいはだんだんゆっくり聞こえてくることもあります。もちろん最初は何度聞いても全く分からないことも普通にありますが、ある意味当たり前のことですから、落ち込む必要は全くありません。そういう時は例えば「3回聞いたけど全然分からんわ!」ということを確認して、次のステップに移ります。


※ちなみにリスニングに先立って発音の習得をお願いしたのは、発音が正確にできるだけで聴解力が飛躍的に向上するからです。やはり自分で発音できる音は聞き取れるものです。ですので「速単」の話に限らず、英語のリスニング能力を向上させたい方は是非、発音のトレーニングに取り組んでみてください。


STEP3:遂に「速単」を開く

目標設定、発音の習得、そしてリスニングチャレンジを経て、いよいよ「速単」を開いて英文に目を通す瞬間がやってきました。「速単」の進め方に正解はなく、レベルや目的、かけられる時間によっても様々な使用方法がありますが、今回は「英語をちゃんと身につける」目的で、それなりの時間を確保して最もストイックに「速単」と向き合うメニューを用意しました。ではいきます。


ギア1:まず一度読む

音声を聞いたのと同じ英文のページを開いて、右ページに掲載されている対訳は見ずに、左ページの英文をまず一度、自分のペースで読んでみてください。内容理解のために読むので、文章の内容が入ってくる読み方であれば、音読でも黙読でも構いません。特に書き込んだり線を引いたりする必要もありません。まず一度、全体を読み通してみてください。


ギア2:分からん単語をマーク

読み終わったら、もう一度読みます。この2回目では、1回目に読んで分からなかった単語に蛍光マーカーで線を引くなどして、自分が理解できなかった箇所を可視化します。人によってはほとんどの単語にマーカーを入れる結果になるかもしれませんが、その場合も気にせず印を入れてください。大事なのは、現在の自分のレベルを妥協なく見える化することです。


ギア2.5:単語の意味を確認

分からない単語をチェックし終えたら、ここでページをめくって下さい。本文中の赤字や太字の単語がリスト化してあるので、分からなかった単語の意味を確認します。ここでも見出し語にマーカーを入れておくと、後で復習する時にスムーズです。また、この単語ページに載っていない単語の中にも分からないものがあった場合は、自分で辞書を引いてチェックしてください。


ギア3:改めて読む

さて、単語の意味を確認したところで、もう一度読みます。今度は少なくとも単語は分かるので、2回目までよりも文の意味を推測できるはずです。ピンと来ない文は、何度か音読してみると意外と内容が掴めたりすることもあるので、試してみてください。特に発音の基礎ができていると、音読してリズムを掴むことで文の内容が頭に入ってきやすくなります。その上で内容を掴みきれなかった文があったら、鉛筆やボールペンなどで線を引いてください。単語レベルで分からないものをチェックしたのが2回目だとすると、この3回目では文レベルで分からない箇所を可視化します。ちなみみ自分がちゃんと理解できているかどうかを確かめるには、内容を実際に声に出して訳してみるか、あるいは訳文をノートに書き出してみるのが一番です。時間に余裕がある人は書いて、逆に時間をあまり掛けたくない人は口頭で訳してみるとよいでしょう。逆に頭の中だけでやっていると、実際には分かっていないのに分かった気になりやすいので要注意です。


ギア3.5:対訳で内容を確認

分からない文も確認したところで、英文の右側にある対訳を読みます。英語で理解できなかった文はもちろんですが、それ以外の箇所も正確に読めていたかどうか確認しながら読み進めてください。ですので、ところどころ左の英文と対照させながらチェックするような感じになります。

ちなみに日本語訳を読む時にオススメなのは、単に「左の英文の対訳」として意味だけに集中するのでなく、日本語の読み物として自分なりに関心を持って読むことです。「速単」の英文は様々な分野の知識を取り上げた面白いものが多いので、ちょっとした読書のつもりで読めば英語以外の教養も身につきます。是非意識してみてください。


ギア4:改めて英語の感覚で読んでみる

さて、単語の意味も文の内容も理解したところで、改めて英文を読みます。既に内容を理解できているからこそ、なるべくそのまま英語で理解するよう意識しながら読んでみてください。英語で理解するというのは、読んだ時に英文の日本語訳が浮かぶ代わりに、英文の内容がイメージとして浮かぶように意識するということです。つまり、読みながら日本語に変換しないことが大切です。内容を直接イメージながら、そのまま訳すことなく「なるほど英語ではこうやって言うのね」といった感じで、英語の語順や言い回しに慣れる意識を持つことが大切です。

また、あくまで英語で理解しながら読むのが目的なので、黙読でも音読でも自分がやりやすい方でやってみてください。どちらにしても、途中で躓かずに最後まで理解して読めるようになったらOKです。ちなみに3回目の所でも書きましたが、読む速度に理解の速度が追いつかない箇所は、何度か音読してみることでスムーズになると思います。


ギア4.5:改めて音声を聞いてみる

ここで、改めて英文の音声を聞いてみます。いったん本を閉じて、耳だけでどこまで聞き取れるか確認してみてください。最初に聞いた時との違いを実感できることと思います。

その上で、今度は再びテキストを開いて、音声に沿う形で英文にも目を通します。これを何度か繰り返して、目と耳から入る情報を互いにシンクロさせることが狙いです。このトレーニングをしっかり行うと、我々の母語である日本語で特に意識せず行われているように、耳からの情報に対して文字が浮かび、また文字を読んだ時にも音が感じられるようになっていきます。これが効果的な音読に向けた準備になります。


ギア5:繰り返し音読する

ここでいよいよ本格的に音読に入ります。全体をスムーズに読めるようになるまで繰り返し音読してください。自分一人で問題なく読めそうならどんどん練習していけばよいですし、まだ英語のリズムが掴めていない方は、CDの音声を少しずつ再生しては真似して音読、というのを徹底的に繰り返しましょう。なかなか忍耐力が要る作業ですが、ここでサボらずに向き合っておくと、後になればなるほど英語のトレーニングが楽になってきます。

それと音読する時のポイントとして、誰かに伝える意識を持ってください。文というのは音と意味で成り立っているものですが、外国語の音読練習になると音にばかり気を取られ、意味の部分を疎かにしてしまうということがよくあります。「速単」に載っているような文章であれば、ラジオやテレビのミニ番組のナレーションをするようなつもりで読むとリアリティが出ると思います。

また練習法の一つとしてオススメなのは、自分の音読を録音(録画)して聞いてみることです。これをCDの音声と聞き比べてみれば、改善点を客観的に把握することができます。

自分の拙い英語と向き合うと落ち込むこともありますが、最初はそんなものです。逆に言えば、後で上手にできるようになってから聞き直すと、自分の上達ぶりを大いに実感できます。流暢に話す近未来の自分を想像しながら、ぜひ諦めず練習してみてください。


ギア5.5:再び音声を聞いてみる

内容を理解した上で耳に馴染ませ、音と文字も一致させ、遂にスムーズに音読できるようになったところで、もう一度本を閉じ、耳だけで聞いてみてください。上のメニューをきちんと消化できていれば、最初にうまく聞き取れなかった時からは想像もつかないほど、正確かつゆっくりに聞こえるようになっているはずです。よく頑張りました!


ギア6:音声に沿ってリピート&音読

たくさん音読した後だと、音声を聞きながら自然に自分の口からも英文が出てくるようになっているかもしれません。その場合は是非そのまま、音声に合わせて(あるいは少し遅れる形で)声に出してみてください。あるいは本を開いて英文を目で追いながら、音声に合わせて音読してみるのもよいでしょう。ただし繰り返しますが、英文の内容をしっかりイメージしながら、自分の言葉として伝える意識を忘れないようにしてください。


ギア7:暗唱

これが最終段階です。英文の内容を暗唱します。家族でも友人でもいいので、本文を見ながら聞いてもらって、正確に言えなかった所を妥協も遠慮もなく正確に指摘してもらいましょう。完璧に暗唱できればクリアです。ただし、しつこく繰り返しますが、英文の内容をしっかりイメージしながら、自分の言葉として伝える意識を忘れないでください。

ちなみに必修編の後半や上級編については、暗唱を目的にする必要はありません。この辺りまで来ると、やりたい人が趣味としてやってください、というレベルです。このレベルの内容であれば、どちらかというとナチュラルスピードで音声を聞いてスムーズに理解できることの方が暗唱するより遥かに重要です。ですのでリスニングには積極的に取り組んでみてください。

逆に言えば中学版、入門編、そして必修編の前半くらいまでは、暗唱できるくらい徹底的にやり込んでも決して無駄にはならないと思います。「速単」自体は直接的に会話力を伸ばすことを想定して作られたテキストではないですが、このくらいのレベルのテキストを一度は暗唱するくらい徹底的に耳と口と頭に染み込ませておくと、英語の骨組みやシステムが身体感覚的にインストールされることになるので、結果的に会話力のベースにもなっていきます。是非頑張ってみてください。


ギア8:暗記

これは更に時間と意欲のある方向けのメニューになりますが、例えば書く力も身につけたい方、あるいは受験生の方なんかには、暗唱と併せて暗記に挑戦してみることもオススメです。

暗記とはすなわち、テキストを最初から最後までそのまま書いて再現できることです。ノートや紙に実際に書いてみて、その後テキストを見て答え合わせをします。間違えた箇所や思い出せなかった箇所は赤字など色ペンで訂正・書き込みを行って、視覚的に印象に残るようにします。冠詞や複数形や前置詞など、日本人が間違えがちな部分も妥協せず厳しくチェックすることが大切です。綴りを間違えた単語やうまく書けなかった文は少なくとも3〜5回位、発音しながら改めて書いてみてください。また間違えたらまた同じように書いて発音します。これも骨が折れますが、続けていればだんだん覚えます。

ちなみにパソコンの画面にタイプしたり、スマホのメモ欄に打ってみるのでも全く構いませんが、その場合はスペルチェックや単語予測の機能をオフにすることを忘れないようにしてください。

ちなみにこの暗記メニューも暗唱と同じく、どんなにやるとしても必修編の前半くらいまでで良いかなと思います。もし「速単」を使って更に書く力をつけたい方は、必修編の後半や上級編の文章を見ながら書き写すことをオススメします。言葉の使い方や言い回しなどに気を留めながら実際に手を動かしていくことで、少しずつ英語の文章の書き方が身についてくるはずです。


以上、合計12段階に分けて「速単」の使い込み方をご紹介しました。せっかくなので、このメソッドに名前を付けようと思います。そうですね、「速単12段階活用法」にします。こういうのは長い目で見て、捻らないのが一番です。

というわけでこのSTEPの最初にお伝えした通り、最もストイックに「速単」と向き合うメニューになっていると思いますが、「速単」を使って本気で英語を身につけたい方は、是非取り組んでみてください。


STEP4:そして教養の世界へ

さて、これが「速単」活用法の最終段階です。

すなわち「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」への移行です。

これには2つ意味があって、一つは「速単」そのものを英語の読書教材とみなして学習するということです。具体的な使い方の中でも触れたように、英文の内容に関心を持って知識を広げていくことです。

そしてもう一つが、「速単」の各英文で紹介されている内容を、更に自分自身で深めていくということです。

例えば必修編であれば「オオカミの子育て」や「お茶の種類」といったテーマの英文で始まりますが、それぞれ本文をマスターした段階で、各テーマについて自分でも調べてみるのです。

眠れないほど気になるテーマに出会った場合は図書館へ行くなどして関係書籍まで読むべきですが、基本的にはグーグル検索を活用して色々チェックしてみるだけでも充分です。まずは「オオカミ 子育て 方法」など、日本語の検索ワードで出てきた記事を読んでみるとよいでしょう。

そして最終的には、ぜひ英語での検索に挑戦してみてほしいと思います。

実例を挙げると、今、試しに「wolf how raise young」みたいなシンプルなワードで検索してみたところ、検索上位に以下のような記事が出てきました。

How Young Wolves Are Raised

How Gray Wolves Take Care of Their Children

いずれもオオカミの子育てについて書かれた英語の記事です。こういった記事をひとつかふたつ読んでみるだけで更に英語の世界が広がります。そして何より、英語を使って新たな知識を得ることができます。これこそまさに「英語で学ぶ」ということです。

なかなか皆さんお忙しいかもしれませんが、是非挑戦してみてください。


以上、5段階(0〜4)のSTEPに分けて、『速読英単語』の具体的な活用方法をご紹介しました。せっかくなので、この全体の枠組みにも同じく名前を付けておきましょうか。そうですね、「速単マスターの5ステップ」と呼ぶことにします。繰り返しますが、こういうのはとにかくシンプルが一番です。

というわけで結論。今回ご紹介した「速単12段階活用法」を含む「速単マスターの5ステップ」に真剣に取り組めば、「速単」を使ってかなりちゃんとした英語力を育むことができ、同時に教養も身につけていけるということです。

共感してくださった方は、ぜひ実践してみてください。少しでも多くの方がこの方法で英語の力を大きく伸ばし、また豊かな知の世界の冒険を楽しんで下さったら嬉しいです。

それではまた。

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