寺子屋の木

terakoya-tree

寺子屋&仕事場に、一本の観葉植物が同居しています(写真)。1年半ほど前に、お世話になっている知人から頂いたものです。実はあともう一本、同じ時期に別の方から頂いた植物もあったのですが、そちらは残念ながら枯らせてしまいました。

寺子屋は基本的に一人で運営していますし、それ以外の仕事も普段は一人で作業する時間の方が圧倒的に多いので、僕の現在の生活には日々同じ空間で同じ空気を吸って過ごす同僚というのがいません。別にそのこと自体には特に何も思うことはないのですが(原則として一人で働く、ということには当然メリットもデメリットもあります)、ある日この観葉植物に水を遣りながら、ふと思い至ったのです。というより繋がったと言えばよいでしょうか。

すなわちこの植物が他ならぬ、僕と「空間を共にする生命体」である、という事実にです。「である」というより「であった」と表現した方が適切かもしれませんが、いずれにせよ、物言わぬ彼(この植物が厳密に男性であるか女性であるかの判別はつきませんが、どういうわけか「彼」と呼ぶ方がしっくりきます)が、約1年半もの間、この同じ空間で文字通り呼吸し、水を飲み、時に栄養ドリンクを摂取しながら生きながらえてきた事実に対して、それまで持っていなかった視点が与えられたのです。

植物に生命が在ること自体は当然認識していましたし、その命を僕の怠慢で枯らせてはいけないという意識も持っていたのですが、この「同じ空間で呼吸をして共に生活をしていた」という感覚にまでは至っていませんでした。おそらくこの感覚は、実際にそれなりの時間を彼と共に過ごしたという事実が生んだものなのだと思います。ある種『星の王子さま』の王子とバラのストーリーみたいな感じです。すなわち、時間が生む絆です。

この感覚を得てから、何だかそれまで以上にこの植物くんのことを大切に想い、また頼もしく感じるようになりました。物言わぬ彼ですが、ずっと変わらず側にいてくれたわけです。人ではないですが、日々同じ空間で同じ空気を吸って過ごす同僚を得ました。同僚というより、戦友と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。いずれにしても、有難い存在です。

彼との関係を大切にしながら、また大事に面倒を見ながら、今後も同じ空間で一緒にやっていこうと思います。


星の王子さま (岩波少年文庫 (001))
サン=テグジュペリ
岩波書店
売り上げランキング: 96,241