『速読英単語』で伸ばせる最も大事な力とは?

前々回前回に続き、受験英語界のベストセラー参考書である『速単』こと『速読英単語』(Z会)についての記事です。タイトルにもある通り、『速単』で伸ばせる最も大事な力というのが今回のテーマです。

なぜこのテーマを取り上げるかというと、このテキストを専ら「単語を覚えるための本」という位置付けのみで理解している人がまだまだ多いからです。

もちろん『速読英単語』というタイトルが付いているわけですから、この本が英単語を覚える、つまり英語の語彙力を身につけるための本であること自体は間違いありません。それは各巻の序文を読んでみても明らかです。

しかしながら、もしそれだけの理由でこのテキストを単なる単語帳とみなしてしまうのだとしたら、実はそれは非常に勿体ない考え方です。多少強い言い方をすれば、ある種の思考停止状態だと言わざるを得ません。あるいは更に言い換えるならば、書名に「英単語」とあるからといって、そのまま素直に単語にだけ意識を向けてしまうのでは勿体ない、ということです。

というのも、『速単』の最大の肝は単語より文章にあるからです。

改めてご紹介すると、『速単』というテキストは主に2種類の見開きページで構成されています。それぞれ言うなれば「文章ページ」と「単語ページ」です。

まず、こちらが文章ページ。

次に単語ページです。ここでは「文章ページ」に出てきた単語をその意味や類義語とともに紹介するページです。

一般的な単語帳というのは、この「単語ページ」でほぼ全編が構成されています。その多くはひたすら単語とその意味が並んでいる形式か、あるいは単語ひとつに対して例文がひとつ以上併記されている形式のどちらかです。(同じ『速単』シリーズでも「入門編」の単語ページは後者の形式になっています)

ところが『速単』の場合、あくまで「文章ページ」に出てきた単語を説明するために「単語ページ」が存在しているような形式になっているので、単語は必ず文章とセットで登場することになります。

つまり『速単』とは、単に単語を覚えるための参考書である前に、多くの文章に親しむための参考書でもあるのです。

様々なテーマの様々な文章を読みながら、結果的にそこに出てくる単語を覚えていく、これこそが他ならぬ『速単』の使い方です。特にこの「結果的に」というところが最大のポイントです。

それは要するに、読書をしながら自然に語彙力を身につけるということです。

そうです。これが本記事の結論です。

『速単』で身につく最も大事な力は語彙力でなく、英語の読書力です。

読書は語彙力の源泉であり、教養の土台であり、学力の基礎にもなります。

英語での読書を通じて、単語だけでなくその単語の使い方や、英語における文章の書き方、論の進め方、そして様々な分野の知識や情報、物の見方などを自然に学ぶことができます。これが読書力であり、それは読めば読むほど更に身についていくものです。特に好奇心を伴う読書は、自分の知的な器を大きく深く広げてくれます

また『速単』で読書の練習を積めば、その後は洋書や英語雑誌を通じた本格的な英語の読書にも比較的スムーズに入っていくことができます。これこそ『速単』がもたらしてくれる最大の効用です。

ですので、今後『速単』に取り組む方は、ぜひ単語を覚えるための勉強というより、英語で行う読書という意識で取り組んでみてください。そうすればより広く深く英語を学べる上、当初の目的だった語彙力も、自然と後から付いてきます。

それではまた。


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