「ポルトガル語 大学」等の検索ワードから本ブログを訪れる方が毎日一定数おられるようです。今が受験シーズン真っ只中であることを考えると、大学でポルトガル語を専攻しようかと考えてこのブログに辿り着いた受験生が少なからずいるものと想像します。今回は、そんな奇特な受験生の皆さんに向けて一言書いておこうと思います。
本ブログではポルトガル語学習の醍醐味や具体的な学習方法について幾つかの記事を書いていますが、実は僕自身は大学でポルトガル語をきちんと学んだという経験はありません(ポルトガル語初級のクラスに数回だけ出たことがあるのみ)。ですので、大学でのポルトガル語専攻について経験者として何かを語れるわけではないことは予め断っておきます。
その上で、ですが、「大学でポルトガル語を本格的に学ぶ」ことを考えている受験生に対して、個人的にはその選択を強くオススメできます。
そもそもポルトガル語専攻を選ぶというのは、法学部や経済学部を選ぶ場合とは違い、「周りも皆そっちに行くから」だとか「就職を考えたらこの道の方がよさそう」だとか、「親や周りの大人がやたら強く勧めてくるから」だとか、そういった外発的な動機がきっかけになっている人は殆どいないと考えてよいでしょう。むしろ一般的には逆だと思います。ポルトガル語専攻を考える受験生の中には、周りの大人による逆風に立ち向かおうとして葛藤している人もいることと想像します。
で、その「葛藤」の中身ですが、おそらく特に以下の3つでしょう。
- 同じ外国語なら英語やスペイン語を専攻した方がいいのでないか
- こんな狭い分野を選んで大学卒業後の仕事はあるのか
- ポルトガル語は難しそうなので、ちゃんと身につくか心配
逆に言えば、上記3点に関して多少なりとも勇気が持てれば、一歩を踏み出せるはずです。というわけで、以下、僕なりにそれぞれに対する意見を述べておきます。
1. 同じ外国語なら英語やスペイン語を専攻した方がいいのでないか
率直に言えば、この疑問には一理あります。ただ、何らかの理由でポルトガル語専攻に興味を持った人間が、一般論に流されて安易に英語専攻に変更するのは一番つまらないのでやめた方がいいです。そもそも外国語を専攻に選ぼうかと考えるようなら人間なら、専攻していようがいまいが英語くらいはサッサと身につけるべきだと考えてください。日本語がしっかり使える、英語も問題なく使える、その上で他の言語を流暢に操れる人間を最低限目指すべきです。そういう意味では、スペイン語専攻と迷う分には極端な話「どっちでもいい」と思います。ただ、スペイン語とポルトガル語を比較した時には、一般にスペイン語の方が「メジャー」でポルトガル語の方が「マイナー」とみなされることは当然なわけで、にもかかわらずポルトガル語の方にまず興味を持ったのだとしたら、そこにはその人だけの個人的な理由がある可能性は高いはずです。身近にブラジルの人がいるだとか、ポルトガルの音楽に魅せられているだとか、何でもいいのですが、「『他ならぬポルトガル語』に興味がある」という人に関しては、素直にその感覚に従うことをオススメします。
2. こんな狭い分野を選んで大学卒業後の仕事はあるのか?
この問いに答えるのは簡単です。言うまでもなく「その人次第」に決まっています。
例えば仕事を「誰かに与えてもらうもの」だと思っているようなら、何を専攻していようが、あるいはどんな有名大学に通っていようが、その後の未来は知れています。「就職」自体はできるかもしれませんが、その後も充実した人生を送り続けられるかどうかとは全く関係がありません。逆に仕事は「なければ創り出す」くらいの気概を持った人間なら、何を専攻していようが仕事は得られます。己を知り、世の中をよく見て、自分の頭をしっかり使ってよく考え、自分の感性で自分と世の中を繋ぎ得る「何か」を感じ取り、かつそこで必要以上に迷うことなく行動に移せるのであれば、何を専攻していようが仕事は得られます。
いずれにしても、一般論で考えないことです。もう少し具体的に言えば、通訳・翻訳家・研究者・教育者等以外にも語学の習得で得た知見を活かす道は色々あるので、「語学以外」にも色々関心を持ちながら語学を活かす方法をよく探してみてください。
その上でもっと言えば、大学の専攻とその後の仕事を必ずしも直結させて考える必要はありません。例えば僕は「就職を有利にするため」に語学を学んだことは人生で一度もなくて、どの言語を学ぶにしても、その理由は「人生を豊かにしたいから」あるいは「あの人と話したいから」でした。何でもかんでも就職や仕事に繋げて考えると人生がつまらくなるので、肩の力を抜いて自分が何に興味を引かれるか感じてみてください。僕は常に自分の感覚に従って何を学ぶか、どこで生きるか、何して働くか等を決断して生きてきましたが、お陰様で今日も元気で幸せです。そして、そんな大人は僕以外にも世の中に幾らでも存在します。
3. ポルトガル語は難しそうなので、ちゃんと身につくか心配
これについては、まず多くの受験生が把握していない事実をお伝えしましょう。すなわち「外国語専攻の学生で、学んだ言語を大学卒業時にしっかり使いこなせている人は決して多くない」という事実です。途中で興味を失ったり、やりたいことが変わった人に関しては、そういうこともあると思いますが、特にそういうわけでもないのに語学もそれ以外の何かも大して身についていない外国語学生というのは、おそらく受験生の皆さんが想像しているよりは多く存在します。
問題は、なぜそうなるのか、です。理由は人それぞれにあるはずですが、それでも入学時に最初から「語学専攻だけど語学をマスターすることはないだろう」と思っているような学生はいないと考えてよいはずです。つまり、どこかの段階で挫折や妥協の瞬間が訪れているわけです。これに関しては考え方と態度の問題もあると僕は思っています。それは「この選択をしておきながら語学の一つも身につかないなんて、そんな人生はあり得ない」という強い気持ちを持てるかどうか、ということです。
例えば僕は大学の第2外国語でスペイン語を選びましたが、もともと意欲的だったにもかかわらず授業についていけず、単位も落とし、一度完全に挫折した経験があります。ただ、語学にはもともと興味も自信もあったので、「自分の人生にスペイン語をこれだけやった事実が残りながら結局話せないで終わるなんてあり得ない」と、その気持ちだけは決してなくなりませんでした。自分の人生に借りを作っている感覚があり、その「借り」をいつか返してやろうと思って、大学4年の時に独学で再び学び始めました。今では仕事や生活に問題ないレベルで話せます。
根性論に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。根性ではなく、自分の人生・自分の選択に対して自ら責任を負うという意識(responsibility)の問題です。自分がその道を選んだ責任を取りに行くという、姿勢の問題です。
本気ならやれます。本気になれないなら、スイッチが入るまで行動してみてください(結果、他の何かにスイッチが入ったなら、それはそれでOKです)。
以上、ポルトガル語専攻を考える皆さんに「ありがち」な葛藤3点について、僕なりの意見を述べてみました。一人でも多くの背中を押すことができれば幸いです。
ポルトガル語、楽しいですよ。そしてポルトガル語を話せる人生は、もっと楽しいです。
豊かなポルトガル語の世界で皆さんをお待ちしています。
あ、最後に!
大学の進路選択で迷っている皆さんは、『きっと、うまくいく』という映画を鑑賞してみて下さい。3時間の大作ですが、絶対に無駄な時間にはなりません。それどころか、未来を照らす3時間となることでしょう。こちらの映画です。是非。
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【追記】YouTubeでポルトガル語授業はじめました!(2020)
ポルトガル語に興味を持っている皆さんのために、YouTubeで授業を始めました!ぜひ観てみてください!
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